こんにちは!作曲家のカトウリョータです。
クリエイターのためのWebマーケティング知識を勉強し、発信しています。
TikTokやYouTubeでバズった楽曲のデータを日々リサーチし、このブログでも紹介しています。
今回は新進気鋭のボカロPが放つ最新のヒット曲、
『ちっちゃな私 / マサラダ』のリサーチです。
それではいってみましょう!
『ちっちゃな私 / マサラダ』 とはこんな曲
『ちっちゃな私』はボカロP・マサラダさんの作品です。
2023/8にリリースされた最新作(2023/9現在)で、すでに30万再生を超えるヒット作品になっています。
マサラダさんは本作でまだ二作目ですが、前作の『ライアーダンサー』もヒットしており、まさに新進気鋭のボカロPと言えるでしょう。
楽曲の内容としては、心の中の弱い自分、傷つきやすい自分をMVの中でポップに表現しています。
『ちっちゃな私 / マサラダ』のリサーチ情報
- リサーチ日 2023/09/28
- YouTube URL
- リリース日 2023/08/08
- ジャンル ボカロ・ポップ
- Spotifyストリーミング数 7005
- ヒットのタイプ 離脱をするという気持ちを忘れてしまう動画、やめ時が分からない動画
YouTubeリサーチのポイント
YouTubeで楽曲のリサーチをするとき重要なポイントである、
1.サムネイルのクリックされやすい要素
2.サムネイルの期待をどこで回収しているか
3.視聴維持率が高い理由
を調べていきます。
1.サムネイルのクリックされやすい要素
ボカロ界隈で流行りの手書き風イラスト
最近のボカロMVは3つのパターンに分けられます
1.作り込んだアニメーション
2.一枚絵と歌詞
3.手書き風のシンプルなアニメーション
今回のMVは3に該当します。
パターン3で人気のクリエイターでいうと、いよわ・もちうつね・稲葉曇・Yukopiなどが挙げられます。
サムネイルではシンプルな手書き風のイラストが書かれていて、
ボカロ界隈のパターン3好きの層には違和感なく受け入れられたと考察できます。
2.サムネイルの期待をどこで回収しているか
序盤で回収
今回のサムネイルではストーリーに対しての期待は抱けないと思います。
ですが、手書き風のアニメーションが始まるんだろうなという期待はイントロとともに回収できています。
3.視聴維持率が高い理由の仮説
繰り返しが少なくストーリー展開が気になる
全編シンプルなアニメーションで綴られていますが、繰り返しが少なくストーリー展開が気になる作りになっています。
曲調が気に入らない以外の理由で離脱することが考えにくい、視聴をキープする上でとてもいいMVと言えます。
個人的に、間奏のソロも途中から小さい私が入ってくるところが好きです。
離脱されがちな長めのソロでもきちんと飽きない工夫がされているのが、マーケティングの観点からも素晴らしい構成になっていると言えます。
最後にきちんとオチがついている
そして最後にきちんとオチがついていて、最後まで飽きずに観ることができる構成になっている点も素晴らしいです。
最後に盛り上がりを持ってくるのは視聴維持率の上で大切なことですが、案外できているMVは多くないと感じています。
その点このMVは最後に大団円を迎えるストーリーになっていて、ターゲット層に感動を与えています。
ターゲットの心情分析とヒットの理由の考察
ターゲット層はニコ動界隈のボカロ好き男女
まずターゲット層はニコ動界隈のボカロ好き男女で、恐らく作者と同じ属性の人たちと推測できます。
マサラダさんが自分に宛てて書いた歌詞、というニュアンスですね。
根拠になっているのはコメント・MVの作り・そもそもボカロ楽曲であることです。
ターゲットの心情分析~内向的で繊細~
コメント欄を見てみると、多かった種類のコメントは
「自分に対して優しくなれる」
「背中を押してくれる」
「歌詞がハグしてくるような感じ」
というもの。
今回のターゲット層は、内向的で繊細な人が多いと推察できます。
僕も同じ属性なので、気持ちはよくわかります笑
今回のリスナーの多くは、大人になっても中身は傷つきやすくて、そのギャップに苦しんでいる人が多いのではないかと推察しました。
根拠としては、うつ病は内向型の人のほうが多いとされている大学の研究結果などがあります(根拠として杏林大学の研究など(P6))
また心理学では心の中の独り言を「チャッター」といい、
チャッターが多い人ほどうつ病傾向が見られるというデータがあります(ミシガン大学イーサン教授の研究)
ヒットの理由は「共感と安心感」
「ちっちゃな私」とは大人になっても弱いままに自分であり、頭の中でずっとネガティブなことをささやき続けるチャッターでもある、と考察しました。
歌詞やMVの内容は、そんな繊細な人たちに対して共感と安心感を与えていると考えられます。
MVの前半で「内向的な人あるある」を見せて、後半で自分と対話し、自らを認めている描写があり非常に心を揺さぶられる構成になっています。
最初から終わりまで共感を持ち続けながら観られる点が、ヒットの大きい理由だと考察しました。
また心理学では自分に対する許しや優しさを「セルフコンパッション」といい、メンタルの不調に効果的であると知られている(セルフコンパッション)
歌詞とMVで擬似的にセルフコンパッションを与えることで、
自分が許されているような感覚・優しくされているような感覚を覚え、感動に繋がっているのではないだろうかと推察しました。
【音楽的観点からの考察】
一聴したときの印象はこの二曲でした。
Taylor Swift – Shake It Off
https://www.youtube.com/watch?v=nfWlot6h_JM
Meghan Trainor – All About That Bass
https://www.youtube.com/watch?v=7PCkvCPvDXk
あまりボカロ界隈では聴かない曲調かなと感じました。
しかし音色に歪みやデチューンを施すことで、しっかりと「ボカロのポップス」に仕上げられてると感じます。
[リズム]
- Kick → 強めのキック。ダンス系のサンプルが使われている
- Snare → オープンリムががっつりかかった激しめのスネア。トランジェント強め、サスティーンちょい長め。歪ませている。
- HH → 生ドラム系のクローズとオープン
[ベース]
- 808っぽい
[リード]
- めっちゃ特徴的な歪んだブラス系の音色。
[ボーカル]
- 最近発売されたSynthesizer Vのライブラリ「重音テトSV」
- 人間ぽすぎるライブラリは敬遠されているが、重音テトSVは人間味とボカロ味のバランスがちょうどいいのかも
- 輪唱しているのもありそうでなかった
[音楽的要素のまとめ]
- 曲調的にはポップスだが、音使いを分析するとちょっと変わったことをしているなと思った
- 歪み感が特に耳に残り、この歪みが生み出す「違和感」がこの曲をただのポップスではなく「ボカロのポップス」にしていると感じた
【MVについて】
手書きアニメーションの流れはここ数年きていると感じています。
たとえばいよわ、もちうつね、稲葉曇、Yukopiなどに代表される人気ボカロPたち。
前述しましたが、ボカロ界隈は作り込んだアニメーション・一枚絵・手書き風のシンプルなアニメーションの三強時代になっています。
その中でも手書き風アニメーションは「同人感」と「プロ感」のバランスがいいのではないかと感じます。
作り込んだアニメーションも人気ですが、どこか作者が遠いところにいるような気がします。一方一枚絵が通用するのは元々人気のあるボカロPだけになってきているようにも感じています。
きゅうくらりん / いよわ
- 強風オールバック / yukopi
- 風呂入るプロファイル / もちうつね(2023夏ボカコレ 6位)
- リレイアウター / 稲葉曇(2023夏ボカコレ 1位)
特に新人ボカロPがとる戦略として、今手書き風アニメーションが一番効果的かもしれないと感じました。
まとめいかがだったでしょうか?
今回はTYouTubeのヒット曲、 『ちっちゃな私 / マサラダ』をリサーチしてみました。参考になれば嬉しいです!
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それでは!